藻類によるバイオ燃料の商用利用に向けて活動・研究開発を行っています。
ホーム > 藻類バイオマスとは > オイルを産出する主な藻類

オイルを産出する主な藻類

 藻類には、細胞内に脂質を多く含んだ藻が多数存在しています。その細胞を破壊し、脂質を取り出して化学反応させればオイルを得ることができます。中でも、燃料に適した炭化水素を大量につくる藻として「ボトリオコッカス」と「オーランチオキトリウム」が注目をあびています。

ボトリオコッカス(Botryococcus braunii

Botryococcus braunii

Botryococcus braunii

 

ナイルレッド染色によって 脂質が黄色く輝いて見える蛍光顕微鏡像

ナイルレッド染色によって
脂質が黄色く輝いて見える蛍光顕微鏡像

 ボトリオコッカス(Botryococcus)は、湖沼に生息する緑色の藻類で、多数の細胞が集まって、不動の群体をつくっています。群体の大きさはときに直径数百μmにも達します。群体の内側には、古い細胞壁と半透明の「細胞外マトリックス」が蓄積しています。小さな群体同士が、このマトリックスによって葡萄の房のように連結している様子もしばしば観測されます。属名のbotryはギリシャ語で葡萄の房のことで、名前の由来になっています。

 ボトリオコッカスは、炭化水素のオイルを産生することで知られています。オイルは細胞外マトリックスに豊富に含有されているほか、細胞内に油滴の形で存在しています。代表的な炭化水素の1つに、ボトリオコッセン(botryococcene; C34H58など)があり、石油や石炭の代替資源として有望視されています。

 ボトリオコッカスは倍加時間が3日以上と、増殖が遅い代わりに、炭化水素含有量は細胞乾燥重量の6割以上にも達します。現在、耕作放棄地を用いた大量培養の研究や、排水を利用した培地の開発が進められています。理論上は、必要な耕作面積、得られるオイル収量ともに、大豆やトウモロコシなどの陸上作物よりも効率面で遙かに優れているため、カーボンニュートラルな再生可能エネルギー資源として期待されています。

 神戸大学で開発された「榎本藻」もボトリオコッカスで、(株)IHI、(有)ジーン・アンド・ジーンテクノロジー、(株)ネオ・モルガン研究所によって設立されたIHI NeoG Algae合同会社で実用化に向けた開発が進められています。

 

オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium

Aurantiochytrium

Aurantiochytrium

 

Aurantiochytrium 蛍光顕微鏡像

蛍光顕微鏡像

 オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)は、海産ないし汽水産の単細胞微生物で、光合成をせず、有機物を吸収して従属栄養で増殖します。コンブやワカメなどの褐藻類や珪藻類などの不等毛植物に近いラビリンチュラ類ヤブレツボカビ科に属することから、従属栄養藻類とよばれることもあります。栄養細胞は直径約5µmから20µm程度のほぼ球形で、運動性はありません。培養条件によっては2本の鞭毛で泳ぐ、遊走子を形成することがあります。

 一般に、オーランチオキトリウムは増殖が速く(倍加時間が2時間を切る報告もあります)、また高い脂質生産能をもっています。乾燥重量あたりの総脂質含量が7割を超す例もあります。多くは、DHA(ドコサヘキサエン酸)などの高度不飽和脂肪酸を産生することが知られていますが、近年、炭化水素スクアレン(squalene; C30H50)を乾燥重量あたり20%(従来種の数百倍)以上産生する株が筑波大学渡邉教授の研究グループによって発見されました。

スクアレンは、健康サプリメント、医薬品、化粧品に利用されるほか、バイオ燃料やプラスチックなどの化学製品の原料としても利用可能であることから、大量培養の研究が進められています。

 

シュードコリシスティス(Pseudochoricystis ellipsoidea

Pseudochoricystis ellipsoidea 蛍光顕微鏡像

Pseudochoricystis ellipsoidea
蛍光顕微鏡像

5μm程度の緑色単細胞植物で、デンソーの藏野博士らが (株)海洋バイオテクノロジー研究所時代に温泉地から単離しました。光合成によりCO2を吸収して増殖し、トリグリセリドを蓄積しますが、少量の軽油相当の炭化水素も含有します。窒素飢餓条件でトリグリセリドを細胞内に蓄積します。

現在、窒素欠乏下で油が溜まるメカニズムを分子レベルで解明中です。(株)デンソー、慶応大学、中央大学などで研究が進められています。

 

イカダモ(Scenedesmus, Desmodesmus

Desmodesmus

Desmodesmus

 緑藻綱ヨコワミドロ目イカダモ科の藻類で、決まった回数の細胞分裂を行い、4、8、16細胞の定数群体を形成します。その形状がいかだに似ていることからこの名が付けられました。

 技術系人材派遣会社のWDB傘下の環境バイオ研究所と徳島大学、四国大学短期大学部、ベンチャーのアムテック(徳島県石井町)で開発が進められています。

藻類産業創成コンソーシアム平成23年度「農山漁村における藻類バイオマスファームの事業化可能性調査報告書」より